【カキ飲み散歩#4】憧れ続けた海男の牡蠣、いただきます。

Column, カキ飲み散歩

佐賀県は有明海、走る車の右手には、どこまでも干潟が続きます。向かう先は太良町、評判の牡蠣をつくる梅津聡さんに会いに。

海男に会いに行く


海男という屋号から、有明海をみながら一服する漁師ゴム長にタオル鉢巻姿と勝手に想像しながら。ちょうど山口から戻ったところという梅津さんは、パリッとしたTシャツにスキニージーンズで車の駐車を誘導していただいた。ここには、星つきレストランのシェフから大学の教授まで、梅津さんの牡蠣に魅せられた人たちが全国からやってくるそうです。

ここは、室内カキ養殖工場?


最初に案内していただいたのは、倉庫のような建物の中、日光が入る屋根の下では、牡蠣の養殖に大切なプランクトンも育ており、張り巡らせたパイプやホースが水槽を巡回しています。訪れたのは、10月初旬、牡蠣の端境期なので、水槽は、ほぼ空の状態。ひとつの水槽に、今まで見たこともないような大きさの岩ガキが静かに待機しておりました。ご自宅の方に移動して、見せてもらったのが様々な形の網カゴ。ウッドデッキの庭の屋根部分にぶら下がったそれらは、三角形に長方形、失敗作に、オーストラリアから輸入したもの、色とりどりに試行錯誤のカゴ研究発表展示場といった感じ。このぶら下がったカゴの下で東京のセレブリティがバーベーキュー集うというから、なんとも楽しい空間です。梅津さんの牡蠣は、日本で一般的なロープつけたホタテの貝殻に種付けした牡蠣を海に垂直に沈めて大きくするロープ垂下養殖方式ではなく、カゴに牡蠣をバラバラに入れて育てるバスケット垂下養殖方式。有明海の塩に満ち引きに揺らされて、手間暇かけられカゴの中でゆっくり育つのです。

有明海のゆりかごに揺られて


おふとせという品種は、殻が丸いのが特徴、カゴの中で牡蠣と牡蠣が擦れ合うことで、丸く成長するそうです。有明海は失礼ながら見た目は泥!ですが見た目とは裏腹に豊かな海、豊富な海産物を育てます。ちょうどここ太良町の大浦地区は、有明海の上部の川から流れた豊富なミネラル分が海流の流れで一番たまりやすいそう。そこで牡蠣の餌となるプランクトンが豊富になり、牡蠣も美味しくなるという仕組み。そして、この海流のおかげで、ノロウイルスも発生しにくいとのこと。ここの牡蠣は熟成肉にも負けない旨味があるから、巻いて食べると美味しいんですよ。と梅津さん、熱い牡蠣のお話しをご自宅でお茶をいただきながら聞いてるとあっという間に時間は過ぎて、夕食時、お腹も空いて口の中は牡蠣の妄想に占拠されておりましたが、まだシーズンでないのが辛いところ。頭にはいっぱい牡蠣の知識を詰め込んで取材は終了。

海男の牡蠣、出荷が始まります


憧れ続けた海男の牡蠣、出荷が始まったようで、ようやく今、ポチっと購入。

この旅で初めて有明海の干潟に降り立ったのですが、足元は自然の牡蠣殻、その先の泥の海にはムツゴロウがぴょんと跳ねるそんな海。その有明海の豊かさと手間暇かけられた牡蠣がついに食べられるのが楽しみです。

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画、文・平尾香
イラストレーター。神戸生まれ。旅や自然からインスピレーションを受けた作風で書籍、雑誌、映画、商品企画、広告などの仕事で活躍する傍ら、個展も数多く開催。世界的ベストセラー「アルケミスト」「ベロニカは 死ぬことにした」(角川書店)などパウロ・コエーリョの翻訳本の装画を担当。著書本に「たちのみ散歩」「ソバのみ散歩」。